下肢静脈瘤について

下肢静脈瘤とは

下肢静脈瘤足の静脈には、血液の逆流を防ぐ逆流防止弁があります。足は心臓から最も遠く、静脈は重力に逆らって血液を心臓まで戻さなければならないため、こうした弁が備わっています。下肢静脈瘤は、この弁が壊れてしまうことによって起こる血管疾患です。
下肢静脈瘤は、そのまま放置しておいて自然に治る病気ではありませんが、命に関わるようなこともありません。しかし、症状の進行度合いが比較的ゆっくりであるため、見過ごされてしまいがちです。

下肢静脈瘤は、そのまま放っておいた場合、症状が徐々に悪化してしまい、足にコブや潰瘍ができたるなど見た目にも影響していきます。足の見た目の変化やだるさなどの症状があるようでしたら、「下肢静脈瘤」の可能性があります。
下肢静脈瘤は治療のできる疾患であり、治療を受けることできれいな足に戻すことが可能です。症状が悪化してしまわないうちに、早めに専門医にご相談ください。

悪化すると…

下肢静脈瘤は足のだるさといった症状からはじまり、怪我やアザが治りにくくなり、コブができたり、皮膚炎や潰瘍を繰り返すようになって、どんどん治りにくくなっていきます。しかし、生命の危機にさらされるということはなく、歩行できなくなったり、足が壊死して切断が必要になることは極めてまれです。

しかし、足のだるさでお仕事に支障が出てくるケースもよくあり、女性の場合は皮膚に浮き出たコブや色素沈着、皮膚炎や潰瘍のせいでスカートをはけなくなる方や、温泉旅行などに行けなくなる方もいらっしゃいます。
下肢静脈瘤は珍しい病気ではありません。そのため、正しい知識を持ち、普段から予防や進行防止を心がけることがとても重要です。

下肢静脈瘤の進行度別症状

下肢静脈瘤の進行度別症状下肢静脈瘤は進行により症状が変化します。自然に治ることはない病気ですので、症状がありましたら早めの受診をおすすめします。

初期症状:足のむくみ・だるさ・重さ・冷え、朝方に足がつる
足がむくんだり、だるい・重いといった症状が現れます。夜、靴下を脱いだ時、足のむくみにより靴下の跡がつくことで自覚される場合があります。こうした症状は下肢静脈瘤だけで出るものではなく、ほかの病気の可能性もあります。
軽度の症状:足の細い血管が浮き出て見える・クモの巣や網目のように透けて見える
血管が盛り上がったコブはまだできていませんが、血管が浮き出て見えるようになって気付くことがあります。クモの巣や網目のように血管が透けて見えている場合には、下肢静脈瘤である場合がほとんどです。
中度の症状:皮膚の下にコブができる
太い血管が蛇行したり浮き出て皮膚のすぐ下でコブ状になります。怪我やアザが治りにくく、軽度の色素沈着を合併していることも多くなります。足にコブができることで驚いで受診される方が増えてきています。この段階で治療を受けることが重要です。
重度の症状:色素沈着や皮膚炎・潰瘍を起こす
下肢静脈瘤を長期間放置しておくと色素沈着や皮膚炎を発症して湿疹や皮膚硬化が見られるようになり、さらに進行すると潰瘍になり、治療を開始しても完治するまでに数年かかる可能性があります。できれば、これより早い段階で専門医を受診しましょう。

このような症状がある方は要注意

だるさなどの症状

  • 夕方になると足がむくむ
  • 足がだるい
  • 足の疲れが取れない
  • 足が重く感じる
  • 足の皮膚が痒い
  • 寝ているときに足がつって目が覚めることがある
  • 足の血管が透けて見えてくる症状
  • 血管が網目やクモの数のように透けて見える
  • 血管が一部、浮き上がってきている
  • 皮膚の下にコブのようなものができた
  • 足の皮膚がボコボコ膨れてきた

足の皮膚に出る症状

  • 怪我やアザが治りにくい
  • ぶつかったと思い当たることがない部分にアザができることがある
  • 色素沈着を起こしている部分がある
  • 皮膚炎を起こしやすく、治りにくい
  • 湿疹ができやすい
  • 皮膚が破れて出血する潰瘍ができた

だるさなどの症状がいくつかあったら、下肢静脈瘤の可能性があります。
血管が透けて見える症状は、かなり高い確率で下肢静脈瘤だと言えます。
皮膚症状は、下に行くに従って重症の下肢静脈瘤である可能性が高まります。

下肢静脈瘤になりやすい要因

加齢

下肢静脈瘤になりやすい要因 加齢ほとんどの場合、加齢により筋力や呼吸機能は低下していきます。静脈の血行にとって筋肉ポンプ作用はとても重要な役割を持っており、筋力や呼吸機能が弱まると、流れが悪くなって血液の滞留が起こりやすくなります。下肢静脈瘤には、このような加齢による各器官の機能低下がかかわっているケースはよくあります。

妊娠

下肢静脈瘤になりやすい要因 妊娠妊娠するとホルモンの影響で血管の進展性が増加します、そのため、静脈が膨らみやすくなり、周囲を筋肉で包まれていない表在静脈が拡張しやすくなり、それに伴って弁もひろがってしまいます。こうなると静脈圧の負担に弁が耐えられなくなって弁不全を起こし、下肢静脈瘤につながる可能性が高まります。

立ち仕事

立ち仕事は、下肢静脈瘤のリスクが高いとされています。人は立った状態でいるとふくらはぎが動かないため筋肉ポンプがあまり働かず、足の静脈を流れる血液が心臓に向かって昇って行くスピードが遅くなります。それでも心臓からは一定のスピードで血液が送られてくるため、足には多くの血液がたまってしまうことになります。足に血液がたまり過ぎている状態を「血液のうっ滞」といい、これが静脈内の圧を上昇させます。圧が上昇した静脈は拡張し、弁を押し広げてしまいますので、そこで逆流が起こります。こうしたことが何度も起こると、やがて弁が完全に壊れてしまい、下肢静脈瘤になりやすくなります。

遺伝的体質

生まれ持った静脈の強さという遺伝的な要素も、下肢静脈瘤に関与しているとの推測が医療の世界では一般的になっていますが、遺伝すると言い切れるだけの報告はまだありません。民族的には発生率の差があり、白人に多く、アフリカ、アラブなどでは少ないとされています。欧米で行われた調査によると下肢静脈瘤の方で肉親に下肢静脈瘤の方がいる確率は70%以上と報告されています。